抗リン脂質抗体症候群の治療
抗リン脂質抗体症候群の治療の最初のステップは、血栓形成の予防です。この目的のために最も入手しやすい薬剤は低用量のアスピリンです。
少量のアスピリンは血小板に働きかけ、トロンボキサンという物質の産生を抑えます。このトロンボキサンは血小板を凝集させたり、血管を収縮させたりするものなので、体内のトロンボキサンの量が減ることにより、結果的に血栓ができるのを防ぐことになります。そしてこの低用量アスピリンを妊娠の直前、あるいはごく初期から服用すると、流産を予防することができるのです。
低用量アスピリンで完全に防ぎきれなかった小さい血栓に対しては、次にこれらの血栓を溶かすヘパリンという薬剤を用います。ヘパリンには強力な血栓溶解作用があるので、低用量のアスピリンと併用すると、血栓形成疾患に極めて大きな効果を発揮します。しかし、血液中の効果の持続が短いので、服用ではなく、長時間かけて静脈投与する点滴が必要になります。しかし最近では、皮下注射用のヘパリンもあります。
抗リン脂質抗体症候群は、血栓形成がまず最初に表れる症状ですが、この種の自己抗体が体内に産出されると、臓器によっては血栓症状の他に、組織の炎症や変性を起こすことがあります。その場合、副腎皮質ステロイドホルモンでこれらの症状を治療をしてから、低用量アスピリンやヘパリンを用いると、治療効果がさらに高まることがあります。また不育症の場合、複数の抗体が体の中に産出されたり、抗体の数値が非常に高い場合にも、副腎皮質ステロイドホルモンが有効なことがあります。
副腎皮質ステロイドホルモンを用いて、胃痛やその他の消化器症状が強くなったり、血糖値が高くなるなどの症状が出る場合には、漢方薬を代わりに用いることがあります。柴苓湯という漢方薬は吐き気、食欲不振、急性胃腸炎、むくみに効く薬ですが、弱いながらも副腎皮質ステロイドホルモンに似た作用があります。